小説版「スマガ」第1巻の冒頭部分をドドンと掲載! ゲーム本編とは少し違った表現で語られる『スマガ』を体験せよ!!
15%体験版すらメンドくさいアナタも、これを読んで『スマガ』『スマガスペシャル』の予習だ!
41. War Without Win
沖の薙刀が、オレの先を指し示す。礼を言って走りだすオレ。黒煙の中に飛び込む。
「おまえ魔女とか言うけどな——結局、ただの人間だろ?」
『違うわ。アタシたちには悪魔が見える。アンタには見えない』
「煙に入りゃ、意味ねーよ」
視界はまっ黒に閉ざされ、頼りになるのは音だけだ。いつ、踏み潰されてもおかしくない。怖くないと言えば嘘になる。というか正直怖い。踏み潰されるのは、空から墜ちるのと同じくらい痛いだろう。想像しただけで腰が抜けそうだ。
『オザキ! やめてってば! 死にたいの!?』
「死にたくないし、死なせたくない! だから走ってるんだ!」
そう。だけど、オレには走る理由がある。止まれない理由がある。
今度こそ、オレはスピカを救う。オレはやっと自分にできることを見つけたのだ。
『だから、それはアタシの仕事なの! アタシはもう、誰も巻き込みたくない! 誰かが死ぬのを見るの、もうたくさんなの!』
ああ。なるほど。こいつは、ずっとそうやって戦ってきたんだ。街を守るために仲間が傷ついて、だから誰も傷つけたくなくて、そのためには自分が傷つくしかないと思っている——。でも、それは終わりだ。オレが終わらせる。終わらせてやる。
「んな簡単に諦めんな! なんでそう決めつけるんだよ! いいか、よく聞け! もう誰も死なない! オレは生きる! だから、おまえも生きる! みんな生き残る! そんでハッピーエンドだ? わかるか? わかるな? わかるよな! ていうか、わかれ!」
オレは黒煙の闇の中を走る。追い縋る死から逃れるように——って、うお!
『オザキ! 大丈夫!?』
目と鼻の先で、アスファルトが沈む。不可視の身体は、もう、すぐそこに在った。
崩れたビルのコンクリート片が、頭上から降り注ぐ。
——オレは辿り着いたのだ。
42. World End
「……スピカ、聞こえるか?」
『う、うん! 聞こえる!? もうやめて! 逃げて!』
「もう無理だ。悪魔はオレの真上。逃げようとしたら逆に危ない。だから……おまえが、なんとかしてくれるか? 真っ暗で何も見えなくて、命懸けかもしれないけど、コイツをやっつけて、オレを助けてくれるか?」
一瞬の間があった。深呼吸して、息を整えるくらいの。
『アタシがなんて呼ばれてるか、知ってる?』
もう、そこにはさっきまでのとり乱した声のスピカはいなかった。
『……知らないか。記憶喪失だもんね』
迷いを吹っきったようにスピカは高らかに宣言する。
『アタシは天才魔女スピカ!! 視界ゼロ? そのくらいちょうどいいハンデよ!』
その声に、オレの心の中から、一抹の不安が消えていく。
オレたちは勝つ。そう信じられた。
あとは、その確定された未来を、現実にするだけだ。
しっかりとスターリットを握り、天に翳す。
あたりは黒い煙に閉ざされ何も見えず、悪魔の地獄からの呼び声のような、重く低い唸りが響くだけ。そんな闇の世界を——。
『アタシの天才たるゆえん、見せてあげるわ!』
叫びとともに、赤い光が、引き裂いた。
闇が晴れる。切り払われた黒煙の隙間から、空の青さが目に飛び込んでくる。
陳腐な言い方だけど、それはまさに闇を払う赤い騎槍。
オレのすぐ上で、悪魔の苦しげな叫びがあがった。
『やった!』『撃破だあああ!』
ガーネットとミラの歓声がスターリットから流れてくる。
オレも同調したいが、そうもいかなかった。悪魔のまとっていた灼熱のマグマが、虚空から滝のように流れだしてきたのだ。慌てて、その場から逃げようとする。
『オザキ、だいじょぶ!?』
「うおっ! あつっ! ……ああ。オレはなんとか。それより、おまえは?」
『よかった。うん、アタシは平気……』
力を、使い果たしたのか、声は弱々しかったが、無事なことに違いはない。ホッとしたその 瞬間。頭の中身までかき回すような、悪魔の叫び声が響いた。
驚いて空を見上げれば、瞳が——。
前世で最期に見た悪魔の瞳が、オレを見下ろしていた。
——おまえだけは、許さない。そう、悪魔が告げたような感覚。
瞳はゆっくりと、近づく。オレから視線を外さず。まるで、倒れ込むように。
「おいおい……ここまで来て……嘘、だろ……?」
肌に刺さる、灼熱の視線。
その目からは、マグマが血涙のように流れ落ちていた。
視界を完全に覆う瞳。時間の感覚が、引き延ばされていく。無限にも等しいと思える一瞬の中で、意識がゆっくりと遠のいていって……。
オザキ! オザキ!!
——誰かがその名を呼んだ、気がした……。
…試し読みはココまで! 悪魔(ゾディアック)に果敢に立ち向かうも、結局絶体絶命っぽいオザキ。一体どうなってしまうのかッ!?
続きを知ってる人も知らない人も、ぜひ小説版「スマガ」を手にとって確認してみてください!!